はじめに ~営業は「売り込む」のではなく「売れる仕組みを作る」時代へ~
「営業=売り込む仕事」
そう思っている人は多いかもしれません。
しかし、今の時代、「売り込めば売れる」わけではなくなっています。
なぜなら、顧客は営業が来る前に、すでに情報を集めている からです。
インターネットやSNSでリサーチし、比較・検討を済ませてから問い合わせをするのが当たり前になりました。
つまり、これからの営業には、「売る力」よりも「売れる仕組みを作る力」 が求められるのです。
その考え方が、「マーケットアウト」 というアプローチです。
今回は、「プロダクトアウト」「マーケットイン」との違いを整理しながら、マーケットアウト時代の営業戦略を解説 していきます。
営業の変遷 ~プロダクトアウト → マーケットイン → マーケットアウト~
営業の考え方は、時代とともに変化してきました。
大きく分けると、以下の3つのアプローチがあります。
- プロダクトアウト(企業主導の営業)
- マーケットイン(顧客ニーズを取り入れる営業)
- マーケットアウト(市場の動きを基準にする営業)
それぞれの特徴を見ていきましょう。
プロダクトアウトとは?(作ったものを営業が売る時代)
プロダクトアウトとは、「企業が作りたいものを作り、それを営業が売る」 という考え方です。
- 企業主導で商品を開発
- 売るために営業が動く(売り込み型)
- 顧客のニーズよりも、企業の事情が優先される
特に、戦後から高度経済成長期(昭和の時代)にかけては、「作れば売れる」時代 でした。
競合が少なく、消費者も選択肢が限られていたため、企業が作った商品を営業が売り込む形でも成功していました。
しかし、インターネットが普及し、顧客が情報を集められる時代 になると、次第にこのやり方が通用しなくなっていきます。

でも、プロダクトアウトのやり方って、今でもあるよね?たとえば、AppleのiPhoneやテスラの電気自動車って、企業が主導で市場を開発した感じがするけど?

そうだね。でも、それは単なるプロダクトアウトじゃなく、市場の変化を先読みして『マーケットアウト』を極めたプロダクト なんだ。Appleやテスラは『これから求められる価値は何か?』を見極めて開発しているから、ただ作ったものを売るのとは違うよ。
マーケットインとは?(顧客ニーズを取り入れた商品開発)
プロダクトアウトが行き詰まる中で登場したのが、マーケットイン という考え方です。
- 「顧客が求めているもの」を作る
- 営業は「売る」よりも「お客様の声を集める」役割へ
- マーケティングリサーチが重視される
例えば、企業はアンケートや市場調査 を行い、顧客のニーズを分析して商品を開発するようになりました。
このアプローチによって、顧客に受け入れられやすい商品が増え、営業の負担も軽減 されました。
しかし、マーケットインにも課題があります。

じゃあ、お客さんの声を聞いて商品を作れば、もう営業しなくても売れるんじゃない?

それが違うんだ。マーケットインは『顧客の声を聞く』けど、市場の動き全体を見ているわけじゃないんだよ。

実際、この頃の営業スタイルも、ただ売るだけじゃなくて、『提案営業』や『ソリューション営業』に変わってきたんだ。顧客の課題を解決する営業が求められるようになって、単なる商品説明だけじゃ成果が出なくなってきた時代だったね。
マーケットの考え方 | 企業のアプローチ | 営業スタイル |
---|---|---|
プロダクトアウト 昭和〜平成初期(〜1980年代) | 企業が作りたいものを作り、営業が売る | 売り込み型営業(プッシュ型営業) ・飛び込み営業 ・電話営業(テレアポ) ・商品のスペック説明重視 |
マーケットイン 平成中期〜後期(1990年代〜2000年代) | 顧客ニーズを調査し、求められる商品を開発 | 提案営業・ソリューション営業 ・ヒアリングをもとに最適な提案をする ・顧客の課題解決にフォーカス ・コンサルティング要素の強化 |
マーケットアウト 現代(令和)(2010年代〜現在) | 市場の動向や未来の変化を先読みし、仕掛ける | インサイト営業・データ活用営業 ・市場トレンド・データを活用して戦略的に提案 ・顧客の購買行動を見極め、適切なタイミングでアプローチ ・ 「売れる仕組み」を作る |
上記のように、営業スタイルは「プロダクトアウト → マーケットイン → マーケットアウト」と、時代背景とともに変化してきました。
この流れを視覚的にまとめた図がこちらです。それぞれの営業スタイルの特徴をイメージでつかんでみましょう。
マーケットアウトとは?(市場の動きに合わせて、売れる仕組みを作る)
ここで登場するのが、マーケットアウト という考え方です。
- 顧客のニーズだけでなく、市場全体の動きを見て戦略を立てる
- 「今どんな課題があり、どんな商品・サービスが求められるか?」を先読みする
- 営業は「売る」よりも「市場にフィットする仕組みを作る」役割に変わる
市場全体の流れを見ながら、売れる仕組みを作る というのが、マーケットアウトのポイントです。
単に「顧客の声を聞くだけ」ではなく、市場のトレンドや社会の変化を先取りして、提供価値を考える ことが求められます。
例えば、デジタル化の流れを先読みした企業は、クラウドサービスやオンライン営業の仕組みを早期に取り入れ、競争優位を確立 しました。

マーケットインは『顧客の声を聞く』けど、マーケットアウトは『市場の動きを読む』ってこと?

その通り!だから、営業も『売る』だけじゃなく、市場の動きを見て提案できる力 が必要になってくるんだ。
マーケットアウト時代の営業戦略
現代の営業は、これまでのように 「最初の接点から商談をつくる」 ことが難しくなっています。
なぜなら、顧客の購買行動がデジタル化し、営業がアプローチする前にすでに購入する製品・サービスがほぼ決まっていることが多い からです。
例えば、企業が新しい製品やサービスを導入する場合、
- 公式サイトや比較サイトで情報収集する
- ホワイトペーパーをダウンロードして検討する
- SNSや口コミをチェックする
この時点で、顧客は 「どの製品にするか?」ではなく、「どの会社と取引するか?」という最終判断の段階 にあることが多くなっています。
つまり、営業が「どんな製品か?」を説明するだけではなく、「なぜ当社がパートナーとしてふさわしいのか」を伝え、顧客の意思決定を後押しする役割 に変わってきているのです。
そのためには、顧客が今どんな情報に関心を持っているのかを把握することが大切です。
そこで重要なのが、「データを活用し、顧客の行動を見極める」こと。
データを活用し、顧客の行動を見極める
- 顧客の購買行動はデジタル化しているため、Webアクセス・メール開封・資料ダウンロードなどの行動データを分析する
- 「今すぐ商談できる顧客」と「まだ検討中の顧客」を分け、適切なタイミングでアプローチする
- マーケティングオートメーション(MA)やCRMを活用し、顧客の関心度を可視化する
営業は「商談をつくる」ではなく「購買の意思決定をサポートする」
- もはや「テレアポをかけまくる」営業ではなく、適切なタイミングで価値提供する営業 が求められる
- 「営業=売り込む」のではなく、顧客が自然に購買できるようにサポートする立場 へ

つまり、営業は『売る仕事』じゃなくて『顧客の購買をサポートする仕事』になるってこと?

そう!お客さんが『この商品、必要だな』と思える環境を整えるのが、新しい営業の役割なんだ。
まとめ ~これからの営業は「売れる仕組みをつくる営業へ」~
ここまで見てきたように、これからの営業は、「売る」のではなく「売れる仕組みをつくる」 へと変わっています。
従来の「営業が頑張って売る」スタイルでは、情報を持つ顧客に響きにくくなり、市場全体の動きを見ながら営業戦略を考えることが不可欠 です。
そのため、営業の考え方も、時代とともに変化してきました。
- プロダクトアウト → マーケットイン → マーケットアウト へと営業の考え方は進化している
- 営業は「売る」よりも「市場の流れを見て、売れる仕組みをつくる」役割へ
- データを活用し、顧客の購買行動に合わせたアプローチをすることが成功のカギ
これからの営業は、「売る」のではなく「売れる仕組みをつくる」ことが求められます。
顧客の行動や市場の動きを読みながら、自然と購入や問い合わせにつながる流れや環境を整えることが重要です。
マーケットアウトの視点を持ち、営業活動を変えていきましょう!
では、何から始めればいいのか?
そこで最後に、中小企業が実践しやすい3つのステップをご紹介します。
ぜひ、今日からできるところから取り組んでみてください!

「なるほど…でもうちには難しそう」と思った方も、大丈夫!
まずはこの3ステップから、できるところだけでOK。ぜひ一歩目を踏み出してみましょう!
中小企業が最初に取り組むべき3つのステップ
1. 「見込み客の行動データを把握する」
顧客がどのように情報収集し、購買を決めているのかを把握することが最初のステップ。
- Webサイトのアクセス解析(Googleアナリティクス)
- メールの開封率・クリック率の確認
- 資料請求や問い合わせ履歴の分析

これまでの営業って、とりあえず電話したり訪問したりしてたけど、今は『相手が何を求めているのか』を把握してから動くことが大事!
まずは、どんな人が自社のサイトを見に来ているのか、メールを開封しているのかをチェックしてみよう!
2. 「今の営業手法を見直し、データ活用型にシフトする」
テレアポや飛び込み営業だけに頼らず、見込み客の興味・行動データを活用する。
- 既存の顧客リストに、メール開封・リンククリックなどの行動データを付与し、購買意欲の高い層を可視化
- MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用し、Web訪問履歴などのホットリードを把握
- ブログやセミナー、資料ダウンロードを戦略的に連携させ、見込み顧客の興味関心を高めながら商談へつなげる

営業リソースは限られているから、“すぐ買う可能性が高い人” に優先的にアプローチしたほうが効率的!
たとえば、メールを何度も開封している人や、資料をダウンロードした人って、今まさに興味を持っている可能性が高いよね?
そういう人に集中して営業するだけで、成果がグッと変わるんだ!
3. 「営業とマーケティングの連携を強化する」
営業だけではなく、マーケティング施策を組み合わせて「売れる仕組み」を作る。
- CRM/SFAで進捗を共有し、商談・問い合わせから温度感の高いターゲット像を把握
- ターゲットに合わせて、SEOや広告施策を最適化し、見込み顧客を効率的に獲得
- 獲得したリードをMAやインサイドセールスで継続的フォローし、商談へつなげる

営業だけで頑張る時代は終わり!マーケティングとの連携によって、営業がしやすい仕組みを会社として整えることが重要です。
たとえば、ブログでノウハウを発信して、問い合わせが増える仕組みを作れば、“興味を持ったお客さん” から連絡が来るから、無理な売り込みをしなくて済むよ!
こうして、営業の考え方も時代とともに変化してきました。
これからの営業は、「売る」のではなく「売れる仕組みをつくる」ことが求められます。
マーケットアウトの視点を取り入れ、自社の営業を「未来志向」にアップデートしていきましょう。